PS3が負けるかどうかはまだ分からない

花見川の日記 - SONYはPS3を売る気が全く無かった”に対して、非常に意義ある反論をいただきました。


おはよう - 久夛良木の野望・全国版
センスあるユーモアを交えた文体で、当該エントリに対する疑問をはっきりと提示していただいてます。
うちのコメント欄も丁寧に見ていただいたようで、本当に感謝。


当方少し疲れてますが、できうる限り返答したいと思います。

Cellを”何に”採用するか

箇条書きにしますと、

  • デジタル放送対応TV(液晶含む)
  • デジタル放送用チューナー
  • HDDレコーダー
  • BDプレイヤー
  • ホームサーバー(=画像も扱えるMDラジカセ的なもの)

これらには他社においてもCellが採用される可能性があります。
理由は「低消費電力」と「描画能力の高さ」。
「低消費電力」というのは意外かもしれませんが、PC向けCPU(60〜120W)に比べると低消費電力(約64W)です。*1
また、HDDレコーダーにはPC用CPU(Pen4)が実際に使われてますが、「遅い」という不評が出ているそうなのです。*2
コメント欄より、

# ch1248 『Cellの消費電力の話が出てるので、こちらの記事を
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0209/kaigai154.htm
http://ascii24.com/news/i/tech/article/2005/02/10/654207-000.html
Cellの消費電力は4GHz時で、だいたい64Wぐらいだそうですが、これってサーバーとかPC用のCPUとしてとらえれば「低消費電力」ですが、家電として考えると「電気バカ食い」なんですよね。
CPU消費電力表:http://www.sne-web.co.jp/newpage189.htm

(中略)

ただし、家電と言ってもAV機器にはかなり早い段階から搭載されると思います。特にHDDレコーダーなんかは消費電力の多いPentium4が搭載されてる機種がけっこうあったりします。そのあたりは描画能力が高く、消費電力の低いCellがシェアを奪えるんじゃないかな、と思ってます。

HDDプレイヤー以外にも、48本のMPEG-2動画を同時復号化できたりするので、多チャンネル化に対応しやすく、デジタル放送対応TV(及びチューナー)には非常に有利です。しかも描画能力も高い。おそらく2011年のアナログ放送廃止に合わせて、Cell搭載TVをガンガン出してきて普及を助けるんじゃないかな、というのが自分の予想です。これがCell家電の中ではいちばんシェアを占めるんじゃないでしょうか。
あとはホームシアターとか、ホームサーバーなんかにも対応すると思います。(参考:発熱地帯 - ゲーム機以外の部分が盛り上がるPS3

PS3は”先行逃げ切り型”で行くべきだったのか


要するに、Cell戦略はPS3が馬鹿売れする事を前提に立てられているのではないか、というのが私の解釈です。
これには異を唱えたいと思います。
随分前からSONYのお偉いさん方は「長期戦で行く」と主張してます。
CNET JAPAN - ソニーのゲームビジネスは10年単位の長期戦

特にお伝えしたいのは、当社には3つのプラットフォームが共存しているということです。PS2は当社の売り上げに大いに貢献しており、世界全体での累計販売台数は1億台に達しています。

 われわれはPS2の寿命を短くても10年と考えています。今は7年目に突入しようとしているところです。また、昨年は「PlayStation PortablePSP)」を発売しました。発売直後の売れ行きは業界の記録を塗り替えるものでしたが、この分野ではまだ多くの作業と啓蒙活動が必要です。

ITPro - 「PS3は買ったその日から進化する」と久多良木氏(3)

---今回,なぜ世界同時発売に踏み切ったのでしょうか。月産100万台のペースでは一地域しかカバーできないでしょう。

久多良木氏:いや,十分。月産100万台で年間1200万台,そんなに一気に日本だけで売れないでしょ。

---1年間というわけではなく,初速の数カ月がポイントではないでしょうか。実際,PS2の発売後,4カ月間で日本・米国・欧州で出荷された数を合計すれば1000万台を上回ります。この勢いでPS3が売れれば品不足になります。今までは地域ごとに発売時期をずらすことで,この初速の違いを吸収してきましたが。

久多良木氏:そういううれしい悲鳴は早く聞きたいな。ただ,ネットワークの時代,そしてプレイステーションの世界が広がった今,どこかの地域だけ販売するという戦略は許されないとの認識がある。PSのときは1年,PS2の時は半年と,日本先行でビジネスを展開したが,もう世界は一つ。ほぼ同時期に発売することに意味がある。そのためにどうするか,ロジスティクスを含めた生産から販売までの体制を十分に吟味・検討した。

PS2のときと比べて出荷台数は予定でも”1/10”。(実際はさらに減りましたが)
ここの部分の解釈は「部品が確保できなかった」というよりも*3、「しばらくはPS2で戦う」という戦略だと思います。


もうすでにPS2の時代から「オーバースペック」と言われ、ユーザー側としては「もうハードの性能は十分」という認識があります。で、この空気から何が起きるかというと、ハードの寿命が延びてきます
スーファミはROMカセットに特殊チップ積んで、性能を誤魔化しながら何とか約6年間。初代PSは特殊チップは積めないものの、ハードの性能がそれなりにあったので約8年間もちました。


このことからPS2のハード寿命は短くて10年、長くて12年ぐらいじゃないかと予測できます。


任天堂は初代PS・サターンが投入された時期から約半年*4約2年間でSFCの寿命が来てしまい、1年間の空白後、64を出しましたが時はすでに遅かったわけです。
しかし今回のSONYには3〜5年間の猶予がある。*5
この間にPS3のコストダウンを図り、Cellの改良を進め、じわじわとCellを売っていく。うまいこといけば、アナログ放送の廃止(2011年)にも繋げることができるので、そこでCell搭載TV(もしくはチューナー)を少し多めに売ることができれば何とかなるわけです。Cell搭載TVはPS3になることが出来るので、ここでPS3は墓から出てくる。この時にもうPS3のソフトが出ていなかったとしても、初代PSとPS2の『遺産』を使えるようにしておけば、どうしたって需要が出てくる。じゃあ、その需要を元にサードパーティーが帰ってくる可能性があるわけです。まさしくゾンビ。


そういえば、今年もっとも売れてる据置ハードってPS2らしいです。
ギズモード・ジャパン - プレステ3、年内に100万台出荷


ソニー・コミュニケーションズのDacid Karrakerが、今年中に100万台のプレイステーション3が出荷できる見通しが立ったといっています。
プレステ3は、今現在19,7000台しか出荷されていません。その間にWiiは476,000台、Xbox 360は511,000台、そしてなんと、プレイステーション2は664,000台売れています…
あ、出荷できるPS3の数も揃ったみたいですね。

総括

早い話、何が言いたいかと言うと、まだわからないってことです。(SONYが不利なのは変わりませんが)
SONY敗北の”空気”に乗っかって騒ぐのもまたそれは良いんですが、もうちょい冷静な見方も必要なんじゃないか、と言いたいのです。


あと、ダイオード職人さんお疲れ!!(泣)

*1:3GHzで駆動すれば約48W

*2:ソースを無くしてしまったので、URLが張れなくて申し訳ないです……。

*3:実際それもあるのだけど

*4:初代PS・SSは1994年の冬に発売されてますが、96年にもSFCにてバハムートラグーンスーパーマリオRPG、ルドラの秘法、スターオーシャン牧場物語などの有名タイトルが出まくってました。申し訳ありません。なのでドラクエ3復刻版が出た96年12月までをSFCの寿命とさせていただきます。

*5:PS2は2000年発売