「若おかみは小学生」について

少し書いてみます。



劇場版「若おかみは小学生!」PV


若おかみは小学生を観てきました。
文科省推薦とは裏腹に主人公は重いトラウマを背負い、明るい若おかみのアニメーションの背後に死の匂いが濃厚に充満した作品でした。


そういう意味では、後半がキツいという感想が多いですが、序盤から心に来るものがありました。というのも、幽霊等の超常の3人は実はおらず、おっこは独り言を喋り、勝手にものを食べる……つまり乖離や過食を起こしていると解釈しても、何ら視聴に問題が無かったからです。


実は彼らはイマジナリーフレンドであり、実は存在しない。物語の構造としても、おっこが心を治癒し、成長していく過程で彼らは見えなくなっていきます。心を治癒するという事は大人への発達です。両親からの愛情を十分に受けたと思しき12歳の少女は自立の境界線に居ます。そこからの自立(治癒)の過程を地域信仰(道教)で結びつけて最終的に昇華した本作は名作と言えましょう。


ここから少し道教の話をします。
おっこ温泉地は元々動物が傷を癒やすために使用し、おっこのご先祖が人間も使えるようにした、という経緯があります。動物達に敬意を払い、「何者も拒まない温泉地」として皆が運用しています。日本の地域信仰は「何者も拒まない」「自然」「才能(個性)の発露」「全ては1つ」。これは弥生時代からの日本の最古の宗教としての道教道家思想)の発露なんですね。(地域信仰や神道道教の派生だったりします)


物語はおっこの自身の「才能の発露」を起こし、超常の存在や両親、動物や人々の思いを巻き込んで「何者も拒まず」、「自然」と地域信仰(道教)を通じて「全ては1つ」になっていきます。この美しい収束は制作陣の卓越したバランス感覚や洗練し尽くしたシナリオから練りだされ、見事に文化的に恥じることの無い名作を産み出しました。


まだ観てない人は楽しみましょう。もう観た人も楽しみましょう。
この作品は何者も拒みません。


会えて良かった作品です。ありがとう、id:hebomegane_sun