初心者向け有線イヤホンまとめ(2024/03)

kanose.hateblo.jp 加野瀬さんの中華イヤホンおすすめ記事に「ナイスエントリ!AIYIMA H2 miniもいいよ!!」とブコメ付けてたら、「花見川さんも書きましょう!」と言われたので書かざるをえまい。

はじめに

5万円のイヤホン紹介したり、高級DAC使え!と言っても皆裸足で逃げ出すだけなので、本エントリの方針を決めておく。

  • 読者層は有線イヤホン初心者を想定する
  • 低価格帯のイヤホンを対象とする
    • 上限は1万円台半ば程度に収める
  • アンプの駆動力が必要なイヤホンは避ける
    • 平面駆動ドライバやパッシブラジエータ搭載の機種など
    • 初心者が手軽に試せないので……
  • 所有イヤホン、あるいはガッツリ試聴経験があるもののみ紹介する

では開始。

DAISO 7301 ¥550

DAISO本気の初代ハイレゾ

DAISO AL-001(¥330)という非常に出来の良いイヤホンがあり、「DAISOなかなかやるなあ……」と思っていたら、急にハイレゾの名を冠して登場したのがこのイヤホン。ドライバ構成は1DD。1

前提の話となるが、DAISOはオーディオにかなり力を入れており、AL-001をはじめ、300円スピーカー1000円のBluetoothスピーカーなどは大変出来がよい。DAISOには音作りのポリシーがあり、「音のバランスの良さ」「中高音の美しさ」を優先し、余裕があると低音にも配慮する……という形を取ることが多い。

そして、7301はKZ ZVXなどの万能型1DDの流れが来た後に、DAISOがすかさずキャッチアップして発売しており、ある意味中華イヤホンが無ければ出てこなかったイヤホンとも言えるかもしれない。

じゃあ音質はどうなのかと言うと、これが素晴らしい。1000円代のイヤホン含めてトップクラスの音質。

暖色寄りニュートラルで中高音の解像度が高く、低音も量感と迫力があるが割と品がある。音のバランスと配分も良い。中音の質が高いのでボーカルも伸びる。分離能も高くて、音の混雑も少ない。曲によっては5倍の価格差を持つKZ ZVXにすら優位を取る。何なんだこいつ

6~7年前であれば1万円超えそうな音ではあるので、大変コスパが良い。
買いたい場合はもちろん近所のDAISOとなるが、DAISOのネットショップでも購入可能

型番は間違えないように気をつけよう。

DAISO 7301

DAISO 6071 ¥550

中高音と解像度に寄せた二代目ハイレゾ

DAISO 7301発売後しばらくして、二代目となる新機種4種が発売された。

ドライバ構成は1DD。音質は7301よりも低音の量感と迫力があり、深いところまで鳴る。その分全体の解像度を少し犠牲にした。そのため、7301よりも暖色。一方で、分離能はあまり下がっておらず、中高音は美しく、ボーカルも伸びる。

低音の迫力があるので、映画やゲームにも向いている。面白いのは解像度が下がってウォームなったせいか、聞き疲れしにくい音質になっており、BGMを流すにも向いている。

音全体のバランスが良いので、もちろん通常の音楽鑑賞にも良い。

7301と並ぶDAISOの名機と言えるだろう

7301と同じく、6071もネットショップにて販売されているため、近所に売ってない方は購入してみるとよい。
余談だが、同じく二代目ハイレゾである6088は質の低い低音が強く出て、音のバランスが大きく崩れているため、非推奨。購入の際は型番に注意しよう。

DAISO 6071

DAISO イヤーピース

実はDAISOにもイヤーピースが¥110で売られており、7301に装着したあわやまたなさんが感動していた。2

7301や6071とセットで買えば、¥660で中華イヤホンよりも安くイヤーピース交換遊びができる。
中華イヤホン事前練習にも良いかもしれない。

TinHifi C2 ¥3650

丁寧で迫力ある低音と絶妙な音のバランス

3000~4000円で良い音紹介しろと言われたら、真っ先に候補に上がるのがこれ。

ドライバ構成は1DD。原音忠実的で非常に音のバランスが良く、低音は上品かつ深く鳴り、高音も美しく、解像度とイメージング能力も高い。
分離能もよく、音場が横の広さがありヘッドホン的。ブラインドテストして聞いたら1万円以上と勘違いしても違和感無い音。爽快感がある。

備品は必要最低限でケースなどは付いていないが、より高価格帯のイヤホンを持っている人でも1本持っておいて損の無いクオリティ。

欠点があるとすれば、ケーブルはKZの安物ケーブルよりも少し良い程度なので、リケーブルしても良いかも、という点ぐらい。買って損は無い。

なお、現在セールらしく、Amazonと公式サイトで3300円で売っている。

www.tinhifi.com
TinHiFi C2

TRN Conch ¥3950

高解像度+広い音場

3000~4000円で良い音紹介しろと言われたら、真っ先に候補に上がる2

ドライバ構成は1DD。TinHiFi C2とは対象的に、寒色系やや硬質で解像度が異常に高い。音場も広大で上下左右奥行きがあり、音場狭めの開放型ヘッドホンを連想するレベル。
特に高音が美しいが、低音も量感が効いている。中音も伸びるが、やや高音気味のボカロだとより映える。
イメージング能力や質感も良く、音が広がっていくような空気感が必要な曲、例えばアンビエント辺りとも相性が良い。

高音に重点を置いているため、刺激的に感じる人にはノズル交換機能が準備されており、高音の調整が可能だ。

TRN「備品全部入れてみた」

TRNはイヤーピースやケーブルも色々販売しているのだが、通常は別売の下記3種の備品が付属。
合計すると¥3740となり、Conchそのものの値段とほぼ同じになるというおかしなことになっている。

  • イヤーピース:TRN Tips
    • 高音に焦点を置いた音に変化 させるイヤーピース。「どのイヤホンもTRNの音になる」との専らの評判。
    • 価格¥980
  • ケーブル:TRN-Redchain
    • 3.5 mm/2.5 mm/4.4 mmを切替可能な銀メッキ銅線&無酸素銅線の混合線
    • 価格¥1980
  • ケース:TRN用ケース
    • TRNロゴ入りアルミケース
    • 価格¥770
      • アリエクだと初回購入だと¥77だけどまあ……

別の中華イヤホンにも手を出したら、TRN TipsでTRN化してもよいし、TRN-Redchainでリケーブルするのもよい。

イヤホン本体も素晴らしいが、初心者欲張りセットとして大変優秀なパッケージとなっている。
TRN Conch

TRN TA1 MAX ¥6550

低音の効いたConchの兄貴分

ドライバ構成は1DD+1BA。

かつての「中低域をDD、高域をBA」が担当するタイプのイヤホンだと、高域が金属的になりがちだったが、本イヤホンは全音域を自然な質感で鳴らす。

もしかすると「DDが全音域を担当し、BAはDDの隙間を埋める形」でナチュラルさを実現しているのかもしれない。

寒色硬質で低域が強く、輪郭がくっきりしてアタック感も強いが上品。今回紹介している中で最も低域が強いイヤホンだろう。

しかし、強い低音は他音域を一切邪魔せず、Conchと同様の中高音の美しさと同等の広大な音場を持つ。
解像度はConchより若干下がるが、定位感(音の配置)はTA1 MAXが上だ。
空気感の再現も上手で、まさにConchの兄貴分のようなイヤホン。

短所を強いて挙げると、ケーブルがConchよりも安価なものになっており、筐体に近い部分が細すぎて絡まりやすく、取り回しが若干良くない点だろうか。
まあリケーブルしてしまえばいいし、短所に対して余りある音質があるため、あまり問題にはならないだろう。

TRN TA1 MAX

Truethear Hexa ¥12500

寒色寄りの信頼性の高い音

ドライバ構成は1DD+3BA。寒色だがあまり硬質ではない。

DDの低音部分の機能は優秀でサブベースがよく出る上深い。が、普段は決して強く主張せず、必要な時のみ顔を出す。
BAは中高音がよく伸び、質感が自然。よくよく聞くと金属的な音も出しているが、ほとんど目立たない。

各音域の鳴り方と定位は正確だが、質感は自然なのだが原音的ではなく、他のイヤホンと比較すると結構調整していることが判る。
その調整は魅力的で、そこそこ広い音場で空気感を上手く作り、出てくる高音の質感と残響はBAというより平面駆動型イヤホンに近いと感じる。今回気付いたが、駆動力のあるアンプと相性が良い模様。

基本的にはオールラウンダーで苦手な曲があまり無く、音があちこちに飛ぶ曲や幻想的な雰囲気の曲(空気感のある曲)などが得意。
自分の中では「信頼性が高いリスニングイヤホン」という印象がある。

Conchと対決させた時の感想を読むと、少しは伝わるかもしれない。

現在、eイヤホンやフジヤエービック含む各量販店で在庫が枯渇しており、Amazonだと¥15600ほどに高騰している。
AliExpressのTruethear公式ショップや、シンセンオーディオで¥12000で購入可能だが、海外のサイトなので少し敷居が高いかもしれない。
Truthear HEXA

TRIPOWIN x HBB Olina ¥15000

価格帯を超えたナチュラニュートラ

ドライバ構成は1DD。ケーブルメーカーであるTRIPOWINが海外有名レビュアーのHBB氏とのコラボで作ったイヤホン。
付属しているケーブルと筐体の質が高い。

ニュートラルかつナチュラルで、オールラウンダー。質感の再現度は素晴らしく、原音忠実性が非常に高い。
解像度と分離能は高いが、良い意味でそれらを感じさせない。音場は適度な広さがあり、定位は非常に正確。
そして、オーケストラを一定以上の正確さで再生できるイヤホンは3万円代でも数える程しかないが、本イヤホンは可能。

かと言って、正確さによる息苦しさやつまらなさがあるかと言うと皆無で、ただひたすら正確なのに高音や低音、特にボーカルがひたすら心地よい。
少しでも心地よさのための調整を行うと、人はリスニングイヤホンと感じるが、本イヤホンはそれを感じない。
なので、モニター用途で使えるかと言うとおそらく使えるだろう。個人的には、既存のモニターイヤホンと呼称されてる製品よりもモニター的と感じる。

よって、イヤホンというよりも解像度やや高めのパッシブスピーカーのような印象を受けるイヤホン。

しかし、そんな優れたイヤホンでもAmazonでは「取扱無し」となってしまい、今のところ、購入できるのはAliExpressLINSOUL公式ストアとなっている。

余談だが、兄弟機に低音により重点を置いた「TRIPOWIN x HBB Olina SE」がある。こちらも大変評判がよい。

TRIPOWIN x HBB Olina

おわりに

書き終わるのに12時間くらいかかった。

正直、他に紹介したいイヤホンはあったのだが、下記の事情があった。

  • Simgot EA500:ごく最近入手性が極端に悪くなり、どこも在庫切れなので紹介せず
  • qdc SUPERIOR:入手性はたいへん良いが、所有して使い込んでいる訳ではないので、迷った上で紹介せず
  • NICEHCK NX7 MK4:入手性はいいが、変態過ぎるので紹介せず

上記3つのイヤホンに興味がある場合は是非とも調べてみて欲しい。どれも魅力的だ。

ほか、DACやアンプについてだが、1万以下で良さそうなものをピックアップしておく。

www.e-earphone.jp

なお、メルカリなどで中古品で安く手に入れる方法もある。

据え置きのDACやアンプについても1万円を超えてしまうが、一応紹介しておく。

Fiioを除くと、Toppingを使っている人を結構見かける。特に、E30(DAC)とL30(ヘッドホンアンプ)のセットで使っている人が結構いる。

なお、Toppingのプリメインアンプは割と壊れるイメージがあるのだが、E30やL30が壊れたという話はほとんど聞かない。
shop.koizumi-musen.com shop.koizumi-musen.com

以上、何らかのインスピレーションが得られれば幸い。

それでは、良いイヤホンライフを!!!!!!


  1. ドライバについて。DDは「ダイナミックドライバ」の略。BAは「バランスド・アーマチュアドライバ」の略。
  2. 私とよくヘッドホンやイヤホンについて語り合ってるRPGツクールプラグイン職人。音響機器のレビュー精度が非常に高い方です。