あっかんべェ一休  ☆☆☆☆☆(最高評価)

あっかんべェ一休(上) (講談社漫画文庫)

あっかんべェ一休(上) (講談社漫画文庫)

あっかんべェ一休(下) (講談社漫画文庫)

あっかんべェ一休(下) (講談社漫画文庫)

読むきっかけは部室の本棚にあったこと。
合気道自体「禅」と関わりが深いからこういう漫画があったのだろうけど、これはすごい。
何がすごいってまず、難解な禅問答を漫画という媒体を使って格段にわかりやすくしている、ということ。俺も禅関連の本は読んだが、例自体もずいぶん古いし、見慣れない単語もずらずら出てくるのでサッパリわからなかったのだが、絵という記号を使うことでこれだけわかりやすくなるとは…。いや漫画になることでわかりやすくなるのは分かってたつもりだが、こんだけ分かりやすくなるとは思わなかった。これは「漫画」でしかできないことだろう。それに漫画というモノは「わかりやすい」という性質上、どうしても正確ではなくなったり、情報が少なめになりがちなのだが、著者の表現力と構成力により、しっかりと情報は圧縮されている。しかもこれだけ忠実に表現されているということは、著者がそれだけしっかりと理解しているということだ。あんた何者だ、マジで。
だからと言ってそっち系の人間のための本というわけでもない。娯楽性は高く、一休和尚のエピソードを見てるだけでおもしろい。女は抱くわ、でかい寺の天井から小便するわ、仏像は燃やすわ…。やってることはメチャクチャだ。ただし、よく見れば一貫した行動になっているという点が恐ろしい。
ヤバい、部室には返すけど自分で買いなおすわ。あまりにも得るものが多すぎる。ここまで学問と娯楽を両立できている本も珍しい。これは文学だ。
ただし、内容をちゃんと理解しようとすれば「禅」という内容自体が難しいので「さっぱりわからんのでツマラン」という人がいてもおかしくはない。それは正しい。でも俺は好き。
ちなみにamazon見て知ったのだが著者は1995年に亡くなってる。翌年の1996年にこの本が「日本漫画家協会賞優秀賞」になってる。惜しい話だ。