SONYは最初から"PS3"を売る気が全く無かった

FIFTH EDITION - SCEと任天堂の「いつか来た道」


SCEは、かつて、PSでゲーム業界を発展させました。
サードに広く門戸を開き、冒険的なソフトが出せる下地を作り、小売を任天堂の支配から解き放ち、市場に競争をもたらしました。
ですが、市場を支配すると同時に腐って、どうしようもないほど腐って、PS3という問題児を作ってしまいました。
上記のように、あちらこちらで批判されてるPS3なのだけども、何だかどうも引っかかる部分があった。
なので、前のエントリで、PS3は新しいテレビを目指そうとしたのではないかという推論を立てたのだが……どうもこれは違うらしい。
前エントリのコメント欄にて、

# rainbowjp 『ソニーPS3をゲーム機とは考えてないよ。あれは今後のソニー製AV製品の雛形。
今後のソニー製AV製品には、PS3の機能か、最低でもCELLチップが必ず搭載される。
ハードで儲けるのが今後のソニーの戦略。』
という意見がとても気になったので、調べてみた。


……すると恐ろしいことが解ったのだ。

クタラギ語の解読

まずこの記事をザッと目を通して欲しい。メンドくさい人には下記に一部引用するので、それを見てほしい。
後藤弘茂のWeekly海外ニュース - 久夛良木健氏が語る、PlayStation 3とCellの正体


[Q] PlayStation 3(PS3)というハードもフォーマットもないと以前語っていたが。

[久夛良木氏]  PS3というノミナル(基準)、プラットフォームはある。

 本当は論理的にはなくてもいいんだけど、それ(固定されたプラットフォームをなくすこと)をやっちゃうと1カ月に1回CPUパワーを高めたり、レンダリングパイプを増やしたりという話になってしまう(笑)。それは望ましくないから、基本的には、ある論理フォーマットで、必要最小限のスタンダードを決めることになるだろう。

[Q] CPUやレンダリングのパワーはこれだけとか決める?

[久夛良木氏]  そう。メインプロファイルみたいなものは必要になるかもしれない。それからメタファとしての単品ゲーム機も必要になるかもしれない。

 しかし、(PS3自体は)ホームサーバーやTVの中、スーパーコンピュータの中に溶けてしまう。そういう意味からすると、今のPS1やPS2はハード自体と100%一致しているが、次(PS3)はそうじゃなくなる。

 DVDがいい例。DVDの板(ディスク)という物理メディアはある。でも、DVDプレイヤーでも、パソコンのDVDソフトでも、ポータブルプレイヤでも再生できる。それと同じだと考えると、とても分かりやすい。じゃあなんで(DVDプレイヤーの)単品がいるかというと、AVラックに入れるというメタファでしょう?

 だから、次もPlayStation 2のようなメタファが欲しいかもしれない。これは流通政策でもある。ある流通的にはメタファが必要になる。

 しかし、テクノロジー的に言えばホームサーバー上で、(コンテンツは)みんな扱えるに決まっている。

見れば分かると思うが、ぶっちゃけナニ言いたいのかさっぱりわからない
これは『クタラギ語』という亜流日本語から成り立つ古文書なので、Google先生と長い間にらめっこしないと解読できない難解な文章だ。
でも、解読する価値は本当にあるから、わかりやすく解説してみよう。


まず、解ったことから先に言うと、SONYPS3を売りたいんじゃなくて、その中のCPU、CELLを売りたいみたいなのだ
このCPUはSONYIBM東芝が約1兆円と長い年月をかけて作り上げたCPUなのだけど、PS3での性能については去年出たXBOX360とどっこいどっこいと言われてる。じゃあ何でその程度のCPUに大量の金と手間をかけたのかと言うと、以下のような性能を付けるためだったらしい。

  1. PCのCPUなどに比べると異常に汎用性・応用性が高く、ひとつのコンピューターのように単独で働くことが可能
  2. 並列処理が非常に得意であり、CELL同士をつなげて働かせることで足し算的に性能が向上する

「なんだ、そんなことか。」と思うかもしれないが、これらは果てしなく重要な意味を持ってくる

「我々はどこにでもいる」

CELLは『1.』により、応用力の高さを生かしてHDDレコーダーやデジタル化したTV・ゲーム機に用いることが可能であり、また『2.』より「CELLの塊」を用いることでPCやサーバー用のCPUとして用いることも可能だ。*1そして、CELLの入った機械は「ほんの少し」手を加えることでPS3になる。これは冗談ではない。


もっと踏み込んで言うと、将来的には『ソフトをダウンロードするだけ』でPS3になる

PCやりながらPS3のゲームをやったり、HDDレコーディング片手にPS3ができたり、サーバーからPS3の情報を配信して受信側でPS3が出来たりするわけだ。これは驚異的である。
逆を言えば、ソフトをダウンロードしてPS3になるのだから、PS3に「ちょっと手を加える」ことでPCやHDDレコーダーになることも可能なわけだ。


これは今までの「ゲーム機ゲームソフトの関係」に非常に似ている。
ゲーム機をCELL、ゲームソフトをHDDレコーダーやPC、TV、PS3と考えればわかりやすい。

ファミリーコンピューターゲームウォッチに比べて画期的だったのは、ROMカセットというソフトを取り替えて、マリオなりゼルダなりテトリスなりボンバーマンなり……と、ソフトの数に比例して遊びの数が無限に増えるという点だった。


おそらくCELLの場合は、CELLという"ハード"に「PC」や「TV」などの"ソフト"をとりつけて使用する。
そして、イデアにより"ソフト"を増やすことで用途が無限に増える


ちなみに、これは花見川の妄言ではなく、上の引用での「DVDが良い例〜」と書いてあった」ところを『翻訳』しただけだ。疑わしいのであればGoogle先生に教えを請いながら、自分で確かめてみると解るはず。

"市場"という名の巨大スーパーコンピュータ&P2P

さらに先ほどの『2.』の意味だが、これは種類が違ってもCELLベースの機械であれば、『つながる』ことで一つのコンピューターとして働くことができる。そして、つながればつながるほど性能は増す。そしてCELLがデジカメや音楽プレイヤーなどの小型のモノや、産業用機械としても応用されることもあり得る。それらが光ファイバー無線LANを介して日本中、いや世界中つながったらどうなるか……?


「CELL市場」という名の巨大コンピュータの出来上がりである。


それだけの天文学的演算処理能力があれば、シミュレータとして学術方面での応用が期待できる。
そもそも「一つのコンピュータ」であるのだから『ファイル共有』なんかも簡単にできる……ってどっかで聞いたことないかコレ。
ご存知「WIN MX」「WINNY」のことですな。(「Youtube」あたりの機能も取り込んでると言える)


これは下手すると「Google」すらも揺るがしかねない、いやWeb2.0そのものを揺るがしかねない構想だ。
さらに、Webだけでなく、CELL専用のLINUXの開発も進んでいるし、CELLをうまいこと売れば、ウィンテルそのものも破壊することが出来る……。恐ろしい。


(しつこく繰り返すが、これは花見川の妄言ではなく、上記URLで実際に久多良木氏が述べていたことである。若年性アルツハイマーの疑いはかけないで欲しい。)

まとめ

以上のように、PS3が売れていなくてもSONYは失敗とは言いきれず、「PS3が売れていないから、SONYは失敗した」というのは「たけしの挑戦状が売れてないから、ファミコンは失敗した」と言っているようなモノになる。*2

ソフトが売れていなくとも本体が売れていれば良く、SONY側とすれば本体のCELLが売れればいいのである。
CELLが売れなくてはじめて、「SONYは失敗した」といえるのだろう。




にしても……、今までPS3はテレビを乗っ取るとか、PS3機能付きVAIOはどうか、とかいろいろ妄想してたのだけど、もうすでに全部計画の内に入ってたとは思わなかった。「ウェブの『向こう側』にPS3を設置すれば売れる」なんていう意見もあったけど、それすらもSONYの手の内だったわけだ。
なんだかお釈迦様の手の上で足掻いてた孫悟空のような気分である。

*1:参考:CELLのクラスタで1PFLOPSを実現

*2:たけしの挑戦状」でなくとも、テトリスとかマリオでも良いのだが